
老人ホーム入居費用をリースバックで|入居前の資金づくりと判断の順番
老人ホームの入居費用をリースバックで用意する方法を解説。入居まで自宅に住み続けながら資金を確保できる半面、すぐ入居するなら通常売却が有利な場合もあります。費用が二重になる期間、前払金の確認点、介護保険の負担軽減や税金への影響まで整理します。
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「老人ホームに入りたいが、入居一時金や月々の費用をどう用意するか」「自宅を売るのは入居先が決まってからにしたい」。こうした場面で、自宅を売却したあとも賃貸として住み続けられるリースバックは選択肢の一つになります。ただし、入居の時期や施設の種類によっては、通常の売却のほうが手取りが多くなることもあります。この記事では、老人ホームの入居費用をリースバックで用意するときの判断の順番と、契約前に確認したい点を整理します。
✓この記事のポイント
- 老人ホームの費用は「入居時の前払金・敷金」と「毎月の利用料」に分かれ、施設の種類で大きく異なる
- リースバックが向くのは、入居まで自宅で暮らしたい・入居時期が読めない・配偶者が家に残るといった場面
- すぐに入居して自宅に戻らないなら、市場価格で売れる通常の売却のほうが手取りは多くなりやすい
- 入居後も家賃がかかる「二重払いの期間」を見込み、賃貸借契約の中途解約の条件を確認する
- 売却代金で預貯金が増えると、介護保険施設の居住費・食費の負担軽減(補足給付)が受けられなくなることがある
老人ホームの費用は「入居時」と「毎月」に分かれる
高齢者向けの住まいは種類によって費用の構造が違います。資金計画を立てる前に、検討している施設がどれに当たるかを確認しましょう。
| 施設の種類 | 入居時の費用 | 毎月の費用 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホームなどの介護保険施設 | 入居一時金はかからないのが一般的 | 介護サービス費の自己負担・居住費・食費など |
| 介護付き・住宅型の有料老人ホーム | 前払金(入居一時金)がある施設と、前払金なしの月払い方式の施設がある | 家賃・管理費・食費・介護サービス費の自己負担など |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 敷金がかかることが多い | 家賃・共益費・生活支援サービス費など |
金額は地域・施設・部屋のタイプで大きく変わります。特に有料老人ホームの前払金は施設ごとの差が大きいため、パンフレットだけでなく重要事項説明書で金額と内訳を確認してください。
リースバックで用意しやすいのは、入居時にまとまって必要になる前払金や、入居後しばらくの月額費用です。一方で、毎月の費用を長期にわたって売却代金から取り崩す場合は、年金収入と合わせて何年分まかなえるかの試算が欠かせません。
リースバックが向く場面・向かない場面
老人ホームに入ると、自宅には住まなくなります。「住み続けられる」というリースバックの利点が生きるのは、入居までの期間に自宅で暮らしたい理由がある場合です。
通常の売却が合いやすい
- 入居先と入居日がすでに決まっている
- 自宅に戻る予定がない
- 家財の整理と退去の準備ができている
- 少しでも多くの手取りを残したい
リースバックが合いやすい
- 入居先は決めたが、空きが出るまで待つ必要がある
- 体験入居などで施設との相性を確かめてから移りたい
- 配偶者が当面は自宅に住み続ける
- 入居一時金を先に用意しないと申し込みが進まない
リースバックの売却価格は、市場価格の6〜8割程度が目安です。買主は家を貸して家賃収入を得ることを前提に価格を決めるため、通常の売却より低くなるのが一般的です。すぐに家を空けられるなら、その差額は「住み続けられる期間」の対価としては割高になりかねません。両者の違いはリースバックと普通の売却の比較で詳しく解説しています。
家を売らない方法も比べる
自宅を担保にお金を借り、亡くなったあとに家を売って返す「リバースモーゲージ」という方法もあります。ただし、「契約者が自宅に住まなくなったら契約終了」といった条件が定められていることがあり、老人ホームへの入居を予定している場合は商品ごとの条件の確認が必要です(リースバックとリバースモーゲージの違い)。
入居までの流れ
リースバックで入居費用を用意する場合、売却の決済と施設への支払いの順番が大切です。売却代金が入る前に前払金の支払い期限が来ないよう、日程を逆算して進めます。
- 1
入居先の候補と費用を確認する
前払金・月額費用・入居までの見込み期間を、重要事項説明書で施設ごとに確認する。
- 2
リースバックの査定を受ける
売却価格と家賃の概算を複数社で比べ、通常の売却の査定額とも並べる。
- 3
賃貸借の期間と解約条件を決める
入居の時期に合わせて契約期間を選び、中途解約の予告期間と違約金の有無を確認する。
- 4
売却の決済を受ける
売却代金を受け取り、住宅ローンが残っていれば完済する。引っ越しはまだしない。
- 5
施設と契約し、入居後に賃貸借を終える
前払金を支払って入居し、予告期間に沿って賃貸借契約を解約して家を明け渡す。
入居先が決まるまで期間が読めない点は、住み替えの「売り先行」と同じ構造です。期間の決め方は住み替えにリースバックを使う、家族で進める場合の注意点は実家・親の家のリースバックもあわせてご覧ください。
家賃と施設の費用が重なる期間を見込む
リースバック後は、入居して家を明け渡すまで家賃がかかります。入居日と明け渡しの日がずれると、家賃と施設の月額費用を二重に払う期間が生まれます。
たとえば売却価格2,000万円・期待利回り8%の場合、家賃の目安は2,000万円×8%÷12で月約13.3万円です。施設に入居してから明け渡しまでに3か月かかれば、それだけで約40万円の家賃がかかる計算になります(家賃の決まり方はリースバックの家賃の相場と計算方法)。
この負担を抑えるために、次の点を契約前に確認しましょう。
- 中途解約の予告期間: 「解約の1か月前までに通知」など、何か月前に伝えれば解約できるか
- 違約金の有無: 期間の途中で解約したときに違約金がかかるか
- 契約の種類: 期間が来ると終了する定期借家契約か、期間の定めのない普通借家契約か(普通借家と定期借家の違い)
- 家財の片付け: 明け渡しまでに家財を処分・搬出できるか。施設に持ち込めない家具の行き先も決めておく
入居の時期がおおよそ決まっているなら、その時期に合わせた定期借家契約が合理的な場合もあります。ただし、入居が延びたときに再契約できるかは買主次第なので、延長の扱いも確認が必要です。
有料老人ホームの前払金で確認したいこと
有料老人ホームの前払金は、売却代金の使い道として最も大きくなりやすい費用です。厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、前払金を受け取る施設に次のような対応を求めています。
- 前払金の算定根拠を書面で示すこと(想定居住期間などをもとに計算する)
- 前払金の返還に備えて、銀行の保証などの保全措置を講じること
- 前払金の全部または一部を返還する契約を結び、返還額を入居契約書などに明示して説明すること
- 解約の予告期間を設けることで、法令で定める前払金の返還義務の期間を事実上短くしないこと
重要事項説明書の様式には、「入居後3月以内の契約終了」と「入居後3月を超えた契約終了」の返還金の算定方法を記載する欄があります。入居してすぐに合わないとわかった場合や、短期間で亡くなった場合に、どれだけ戻るかを確認しておきましょう。
前払金を払うのは売却代金が入ってから
リースバックの決済日より前に前払金の支払い期限が来ると、資金が足りなくなります。施設の申し込みから入居までの日程と、売却の決済日を並べて確認してください。決済が遅れた場合に施設側が待ってくれるかも、事前に聞いておくと安心です。
売却代金で、介護保険の負担軽減が受けられなくなることがある
特別養護老人ホームなどの介護保険施設では、所得の低い方の居住費・食費を軽くする「補足給付」(負担限度額認定)があります。厚生労働省の資料によると、対象は原則として世帯全員が市町村民税非課税の方で、預貯金等の額にも上限があります。
| 利用者負担段階 | 預貯金等の上限(夫婦の場合) |
|---|---|
| 第2段階 | 650万円(1,650万円)以下 |
| 第3段階① | 550万円(1,550万円)以下 |
| 第3段階② | 500万円(1,500万円)以下 |
(出典: 厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」。段階ごとの収入の基準は資料と市区町村の案内でご確認ください)
自宅は預貯金ではありませんが、リースバックで売却すると代金は預貯金になります。売却前は補足給付を受けられた方でも、売却後は上限を超えて対象外になり、居住費・食費の負担が増える可能性があります。売却代金を前払金などの施設費用に充てる計画と、補足給付を受けられるかどうかは、市区町村の介護保険の窓口やケアマネジャーに確認しながら判断しましょう。
税金:住まなくなってから売るときの期限
自宅を売って利益が出た場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」が使える可能性があります。国税庁の説明では、住まなくなった家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の一つです。また、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外とされています。
リースバックは住んでいる間に売却するため、施設に入ってから売却時期を探すよりも、この期限を気にせずに進めやすい面があります。ただし、買い戻しを前提とした契約などでは扱いが分かれることがあるため、適用できるかは税理士・税務署にご確認ください(リースバックで3,000万円特別控除は使える?)。
契約前に確認したいこと
老人ホーム入居を前提にしたリースバックのチェック
- 入居先の前払金・月額費用・入居までの見込み期間
- 通常の売却の査定額と、リースバックの売却価格の差
- 家賃の額と、入居後に家賃と施設費用が重なる期間
- 中途解約の予告期間と違約金の有無
- 入居が延びた場合に賃貸借を続けられるか
- 売却の決済日と前払金の支払い期限の順番
- 売却後に補足給付(負担限度額認定)の対象から外れないか
- 3,000万円特別控除などの税金の扱い(税理士・税務署に確認)
国土交通省のリースバックに関するガイドライン(2026年10月1日施行)では、家賃・契約期間・違約金などの賃貸借の条件も、宅建業者が事実を告げなかったり事実と異なる説明をしたりしてはならない事項として扱われています。入居の予定を伝えたうえで、解約の条件を書面で説明してもらいましょう。高齢期のリースバック全般の注意点は高齢者・年金生活のリースバックで解説しています。
まとめ
老人ホームの入居費用をリースバックで用意する方法は、入居まで自宅で暮らしたい方や、入居時期が読めない方、配偶者が家に残る方に向いています。一方、すぐに入居して自宅に戻らないなら、通常の売却のほうが手取りは多くなりやすいため、両方の査定を並べて判断しましょう。リースバックを選ぶ場合は、家賃と施設費用が重なる期間、前払金の返還の条件、売却後の補足給付や税金の扱いまで、契約前に確認しておくことが大切です。
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よくある質問
Q. 老人ホームに入ったあとも、リースバックした家の家賃はかかりますか? A. 賃貸借契約を解約して家を明け渡すまでは家賃がかかります。中途解約の予告期間が長いと、施設の費用と家賃を二重に払う期間が長くなるため、予告期間と違約金の有無を契約前に確認してください。
Q. すぐに老人ホームに入る場合も、リースバックを使ったほうがよいですか? A. 入居日が決まっていて自宅に戻る予定がないなら、通常の売却のほうが高く売れやすく、手取りが多くなる可能性があります。入居までの期間に住み続ける必要があるかを基準に、両方の査定を比べて判断しましょう。
Q. 自宅を売ると、特養の居住費・食費の軽減が受けられなくなりますか? A. 売却代金は預貯金になるため、補足給付(負担限度額認定)の預貯金等の上限を超えると、対象から外れる可能性があります。上限は所得段階によって異なるので、市区町村の介護保険の窓口でご確認ください。
Q. 施設の前払金は、入居後すぐに退去したら戻りますか? A. 有料老人ホームは前払金の返還に関する契約を結ぶことになっており、重要事項説明書に入居後3か月以内とそれ以降の返還金の算定方法が記載されます。具体的な返還額は施設ごとに異なるため、契約前に書面で確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」
- 厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」(令和8年7月策定、令和8年10月1日施行)
この記事の執筆・監修
リースバックス 編集部編集部
リースバック・不動産売却に関する情報を、公的機関や事業者の公開情報をもとに調査し、利用者目線でわかりやすくお届けする編集チームです。制度や相場は変化するため、最新情報は専門家への確認を推奨しています。
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