
新リース会計基準でセール&リースバックはどう変わる?2027年適用の影響
2027年4月以降開始事業年度から強制適用される新リース会計基準(企業会計基準第34号)で、セール&リースバックの会計処理はどう変わるのか。オフバランス効果への影響、対象となる会社、中小企業の実務への影響を整理します。
約12分で読めます
2024年に公表された新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)が、2027年4月1日以後開始する事業年度から強制適用されます。「セール&リースバックのオフバランス効果がなくなるのでは」という声も聞かれますが、影響は会社の規模・上場の有無によって大きく異なります。ポイントを整理します。
✓この記事のポイント
- 新基準では、借手はオペレーティング・リースを含むほぼすべてのリースを資産・負債に計上(オンバランス)する
- セール&リースバックは「売却」と認められるかの判定が厳格化し、認められても使用権資産とリース負債の計上が必要になる
- 従来期待された「フルオフバランス」の効果は、適用会社では縮小する方向
- 強制適用の対象は主に上場企業や金融商品取引法の開示会社等。多くの中小企業は従来の処理を継続できる見込み
- 財務指標への見え方が変わっても、資金調達・借入枠温存・承継対策といった実需のメリットは変わらない
適用の要否・処理は必ず専門家に確認を
この記事は制度の概要を一般向けに整理したものです。自社が新基準の適用対象か、個別の取引がどう処理されるかは、監査法人・顧問税理士・会計士に必ずご確認ください。
新リース会計基準の概要
新基準(企業会計基準第34号)は2024年9月に公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から強制適用されます(早期適用も認められています)。
最大の変更点は、借手の会計処理です。
- 従来:ファイナンス・リースのみオンバランス。オペレーティング・リース(通常の賃借)は賃借料の費用処理でよかった
- 新基準:オペレーティング・リースを含め、原則すべてのリースについて**「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上**する(国際的なIFRS第16号と同様の考え方)
短期のリース(12か月以内)や少額のリースには簡便的な取り扱いが用意されていますが、事業用不動産の賃借は通常、オンバランスの対象になります。
セール&リースバックへの影響
セール&リースバックは「売却」と「賃借(リースバック)」の組み合わせです。新基準では次の2段階で影響を受けます。
1. 「売却」と認められるかの判定
譲渡が収益認識基準における**「支配の移転」の要件を満たすか**で処理が分かれます。買い戻し条項の内容などによって売却と認められない場合は、金融取引(実質的な借入)として処理され、資産は貸借対照表に残ったまま、受け取った代金は負債として計上されます。この「売却か金融か」の判定は従来からありましたが(会計処理と仕訳の基本)、新基準でより整理された形になります。
2. 売却と認められても「使用権資産・リース負債」が載る
従来のオペレーティング・リース型のリースバックなら、売却後の賃借はオフバランスにできました。新基準では、リースバック部分について使用権資産とリース負債を計上するため、貸借対照表から不動産関連の資産・負債が完全に消えるわけではなくなります。また、売却益のうちリースバックによって使い続ける権利(使用権)に対応する部分は、認識が制限されます。
「オフバランス効果ゼロ」ではない
計上されるのは物件全体の価値ではなく「使用権」に対応する部分で、リース期間・賃料水準に応じた金額です。総資産の圧縮効果が完全に失われるわけではありませんが、従来イメージされた「まるごとオフバランス」からは縮小する、というのが実務的な理解です。
あなたの会社は対象か?——中小企業への影響は限定的
ここが実務上いちばん重要なポイントです。
| 会社の区分 | 新基準の適用 |
|---|---|
| 上場企業・金融商品取引法の開示会社 | 強制適用(連結子会社含む) |
| 会社法上の大会社(会計監査人設置会社) | 適用対象になり得る |
| 上記以外の中小企業 | 「中小企業の会計に関する指針」等により従来の処理を継続できる見込み |
多くの非上場・中小企業は、引き続き賃借料の費用処理を中心とした従来型の会計を続けられる見込みです。つまり、関西の中小企業のセール&リースバック実務への直接の影響は限定的と考えられます。
ただし次のケースは注意が必要です。
- 上場企業の子会社・グループ会社:親会社の連結決算で新基準が適用される
- 将来の上場(IPO)を目指す会社:上場準備の過程で新基準ベースの決算が求められる
- 金融機関の見方:形式上オフバランスでも、金融機関が実態ベースで財務を評価する可能性は従来からある
税務は別の話
会計基準が変わっても、法人税務上の取り扱いは税法独自の判定で行われます。売買として扱われるか、賃料が損金になるかは会計処理と自動的には連動しません。会計と税務の両面を、顧問税理士に個別に確認してください。
それでもセール&リースバックの実需は変わらない
新基準で変わるのは「決算書上の見え方」です。次のような実需のメリットは影響を受けません。
- 不動産を使い続けながら、まとまった資金を確保できる
- 借入ではないため金融機関の融資枠を温存できる
- 納税・賞与・仕入れなど、期日のある資金需要に間に合わせられる
- 事業承継・相続に向けて資産を現金化して整理できる
財務指標の改善「だけ」を目的とする場合は効果の再検証が必要ですが、資金調達・資産整理の手段としての価値はむしろ変わりません。活用場面の全体像は法人がリースバックを活用する代表的なケースをご覧ください。
よくある質問
Q. 新リース会計基準はいつから適用されますか? A. 2027年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から強制適用です。早期適用も認められています。自社の適用時期は決算期によって異なるため、監査法人・顧問税理士にご確認ください。
Q. 中小企業もオンバランスが義務になりますか? A. 強制適用の対象は主に上場企業など金融商品取引法の開示会社等です。多くの中小企業は中小企業向けの会計指針等により従来の処理を継続できる見込みですが、グループ会社の場合は親会社の方針に留意してください。
Q. 新基準の適用後、セール&リースバックをする意味はなくなりますか? A. いいえ。資金調達・融資枠の温存・資産整理といった実需のメリットは変わりません。フルオフバランスを前提とした財務指標の改善効果のみ、期待値の再検証が必要です。
Q. 既に契約しているリースバックはどうなりますか? A. 適用初年度の経過措置や遡及適用の方法は取引・会社によって異なります。既存契約の扱いこそ個別性が高いため、必ず監査法人・会計士に確認してください。
まとめ
新リース会計基準により、適用会社ではセール&リースバックの「オフバランス効果」は縮小方向となりますが、多くの中小企業は従来の処理を継続できる見込みであり、資金調達手段としての価値は変わりません。自社が適用対象かの確認と、目的(資金か財務指標か)の整理をしたうえで検討を進めましょう。
仕組みの基礎はセール&リースバックの解説、会計処理の基本は会計処理と仕訳をご覧ください。関西エリアのご相談は無料相談フォームで承ります。
この記事の執筆・監修
リースバックス 編集部編集部
リースバック・不動産売却に関する情報を、公的機関や事業者の公開情報をもとに調査し、利用者目線でわかりやすくお届けする編集チームです。制度や相場は変化するため、最新情報は専門家への確認を推奨しています。
監修:松浦 誠大宅地建物取引士
株式会社ハース所属の宅地建物取引士。大阪・梅田を拠点に、リースバックを含む不動産売買・賃貸借の実務に携わる。実務者の視点から、記事内容の正確性を確認しています。
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